日本の年金 (岩波新書)
年金制度はわかりにくい。どこの国でも年金は政治的な「爆弾」だから、わざとわかりにくくしているのだ。たとえば「マクロ経済スライド」は「年金給付率の自動削減」だが、削減という言葉は使わない。厚生年金の「事業主負担」も会社が半分負担してくれると思う人が多いが、会社からみると保険料は人件費の一部なので、それは賃金の支払い延期として労働者が負担しているのだ。

専門家にも多いのは「高齢社会では賦課方式を積立方式に転換すべきだ」という意見だが、本書はこれに疑問を呈する。積立方式は貯蓄と同じなので、高齢化による不公平は少ないが、所得再分配の効果はない。今から積立方式に転換すると、これまでの賦課方式による(今の受給者に払う)保険料に加えて、新たに自分の年金の積立が必要になる二重の負担の問題が生じるので、政治的には不可能だ。

積立方式によって資本蓄積で成長率が高まるという効果も、今の日本のように企業が貯蓄過剰の状態では考えられない。賦課方式の年金は国債と同じなので、政府がマイナス金利で民間から金を借り、それを低所得の老人に再分配していることが、現在の景気を下支えしているともいえる(この点では日銀の財政ファイナンスが機能している)。

年金給付を削減することは、世代間の公平という点では必要だが、マクロ経済的にいいとは限らない。影の金利がマイナス8%以上という世界史上にも類を見ない状況で政府債務を減らすと、さらにマイナスがひどくなって銀行業は壊滅し、日本経済が大きなダメージを受けるおそれがある。

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