「2000万円の赤字」報告書で年金問題に火がついた。この問題は短期的な景気しか眼中にない安倍政権の弱点だった。それが報告書の受け取りを拒否するという異常な対応の原因だろう。マクロ経済スライドをしないで給付額を維持したまま、年金保険料も消費税も上げないとなると、残る財源は国債の増発しかない。

国債を大量発行するには、今の「2025年プライマリー赤字ゼロ」という中期財政計画を修正しないといけないが、これは金利上昇とインフレをもたらすおそれがある。それをコントロールできるかどうかが、安倍政権の勝負所だろう。これによって起こる問題は2種類ある。一つは資金需給の逼迫による金利上昇、もう一つは財政不安による財政インフレである。

このうち前者は金融市場の問題なので、日銀が国債を買い支えればコントロールできるが、後者はわからない。年金会計の隠れ債務は800兆円ある。もし日本政府が年金財政を支えるために今後も数百兆円の赤字を出すと債券市場の多数派が予想すると、国債が暴落して財政インフレが起こるかもしれない。それをインフレ目標2%以内にコントロールするのは、ガラスを2%割るぐらいむずかしい。

外為市場で円売りが激増すると、日銀が国債を買い支えても、海外の投機筋が先物で空売りをかけるだろう。今までもヘッジファンドが、国債の空売りをかけたことがあった。アメリカの住宅バブル崩壊を的中させて大もうけしたカイル・バスは、2012年1月に「日本国債バブルは18ヶ月以内に崩壊する」と予言した。

続きは6月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。