NYタイムズが、MMTと安倍政権の微妙な関係について、皮肉な記事を書いている。アメリカのMMT経済学者は「日本はMMTの成功例だ」と賞賛するが、日本政府はそれを認めない。国会で「安倍政権はMMTを実行してるんじゃないか」と質問されても、安倍首相も麻生財務相も黒田総裁も否定する。それを認めると、金融政策のタブーになっている財政ファイナンスを認めることになるからだ。

安倍第2次内閣の当初の発想では、日銀が「輪転機ぐるぐる」でお札を印刷すれば、財政赤字を増やさなくてもデフレは脱却できるはずだった。黒田総裁も消費税の増税を延期すると金利急騰の「どえらいリスク」があると反対し、その景気への悪影響を量的緩和でカバーするはずだった。しかし2014年の増税で景気があやしくなり、量的緩和が空振りに終わってから、安倍首相は財政バラマキに回帰し、黒田総裁とのずれが大きくなった。

もともと黒田総裁はどマクロのリフレ派ではなく、日銀が「インフレ期待」を作り出して物価を上げるという(主流派に近い)発想だった。これは財政健全化を進めながら成長を実現する財務省の方針と整合的だったが、素朴ケインズ主義に近い安倍首相とは違っていた。しかし今や量的緩和は、財政ファイナンスの意味しかなくなった。ここで「金融政策は無意味だ」というMMTを認めると日銀は宙に浮いてしまい、アベノミクスを根底から否定することになる。

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