景気があやしくなって、また増税延期論が盛り上がってきた。「赤字財政を許すとバラマキ財政の歯止めがなくなる」という批判に対して「議会制民主主義では、主権者たる国民の選んだ議会が財政赤字を決めればいい」という人がいるが、これは間違いである。政治家の目的は正しい経済政策ではないからだ。

政治家の目的は次の選挙で再選されることなので、自分の任期中に財政支出を増やして負担は先送りする短期バイアスがある。このため財政政策は時間非整合的になるので、ケインズ政策をやめて中央銀行が金融政策で調整しようというのが、1980年代以降のマクロ経済政策である。ここでは中央銀行の独立性が時間整合性の担保だった。

しかしゼロ金利で金融政策がきかなくなると、独立性にも意味がなくなる。そこで最近はまた財政政策が注目されているが、ここにも問題がある。現実の財政実務は財務省に委任されているが、彼らには過剰な時間整合性を求める硬直バイアスがあるのだ。最近ではEU(特にドイツ)の緊縮財政が南欧諸国の財政危機を深刻化させ、域内各国の「反緊縮」運動や右翼政党の台頭をまねいた。

財政政策をコントロールするには、議会から独立して強い権限をもつ「独立財政委員会」が必要だ、とロゴフは論じているが、これは政治的には困難だ。予算編成権は財務省の権力の源泉だからである。

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