長期停滞の問題は「なぜゼロ金利が続くのか」に尽きる。「それは日銀が国債を爆買いしているせいで、日銀が撤退したら金利が急上昇する」という話がよくあるが、日銀の国債購入は2016年の年80兆円から18年には30兆円に減ったのに、長期金利は低下してマイナスになった。それは買う投資家がいるからだ。こういう資金需給は日銀がコントロールできる。

「日銀の保有する国債が暴落すると債務超過になって日本経済が崩壊する」というのも誤りだ。日銀の保有有価証券は時価評価ではなく、額面と取得原価の差を満期まで毎年均等に算入する償却原価法だから、たとえ評価損が日銀の自己資本(約8兆円)を上回ったとしても、決算で債務超過になることはありえない。

問題は国債が借り換えられなくなるリスクである。今の日本でそんな心配をする人はいないが、2010年代のユーロ圏のようにデフォルトの確率が上がると長期金利(国債のリスクプレミアム)が上がり、これによって将来の(利払いを含む)政府債務が増え、それによって国債が暴落し、円安になってインフレが増幅する。

このような財政インフレは、通貨への信認の毀損である。それは資金需給のような短期の問題ではなく長期にわたる政府債務の予想によるものなので、日銀はコントロールできない。中央銀行の独立性を守ることは役に立たない。財政危機は政府の問題なのだ。

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