きょうからアゴラ経済塾「長期停滞の時代」がスタートする(ネット受講はまだ受け付け中)。これはいま論争中の問題だが、これを考えるとき大事なのは、次の3つの概念を区別することだ。
  • GDP成長率
  • 潜在成長率
  • 可能な潜在成長率
現実のGDPと潜在GDPの差がGDPギャップ(需給ギャップ)である。これまでの常識では2008年の世界金融危機のような大不況が起こったときはGDPギャップがマイナス(需要不足)になるので財政出動が必要だが、時期がたつとギャップは縮小して経済は回復すると考えられていた。ところが金融危機から回復した後も、先進国では低成長が続いている。

これを説明するために出てきたのが、サマーズの長期停滞論である。Fatas-Summersは、これをユーロ圏について次のようなシミュレーションで説明している。2007年の成長率のトレンドが金融危機で大きく下方屈折したが、その後回復した。しかし2011年からEUの緊縮財政で財政支出が削減されたため、さらに成長率が下がったという。

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彼らの計算ではEUが緊縮財政にしないで赤字財政を拡大していれば、図の"Potential11"という成長率には達していたはずだ。つまり潜在成長率とは別の可能な潜在成長率があり、緊縮財政でその達成が阻害された、というのがサマーズの見方である。これによれば需要不足は構造的な問題なので、財政赤字が中長期にも必要だということになる。

これに対する批判も多い。その一つは、2008年までの成長率が過剰債務によって嵩上げされたバブル的な水準であり、今はそれが解消されて正常化する途上だ、というロゴフの批判である。これによればゼロ金利はいずれ終わり、成長率も潜在成長率に収斂するので、財政赤字を拡大するのは危険だ。赤字を縮小することが政治的に困難だからである。

続きは4月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。