協力と裏切りの生命進化史 (光文社新書)
人類は協力で進化してきたが、これは進化の歴史の中では例外である。個体数でみると圧倒的に多いのは細菌で、1031ぐらい。それ以外のすべての生物を合計しても、細菌の1/10万もいない。つまり進化の大部分は、単細胞生物の競争なのだ。

ではどうやって競争の中から協力が生まれたのだろうか。多細胞生物が生まれたのは、光合成細菌が原核生物に細胞内共生して葉緑体になり、好気性細菌が細胞内共生してミトコンドリアになったためだというのが通説だが、そのきっかけは細菌の感染や捕食で、仲よくすることが目的だったわけではない。

同じような協力は、社会性昆虫や人類の社会性の進化にもみられるが、これをゲーム理論のしっぺ返し(TFT)で説明する本書の議論は誤りだ。TFTが強いのは1対1のトーナメントだけで、不特定多数の対戦では、つねに裏切り続ける戦略が最強である。協力は裏切りによって集団が崩壊するリスクをはらむ、不安定な戦略なのだ。

癌細胞も裏切り者だから、増殖すると宿主は死に至る。それを防衛するために免疫機構が癌細胞を攻撃するが、それに耐性をもつ癌細胞が生まれ、さらにそれを攻撃する免疫が進化する…という進化的軍拡競争が起こる。これは無駄なようにみえるが、癌細胞という裏切り者が免疫の「軍事同盟」を強化し、協力の進化を生み出しているのだ。

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