聖なる天蓋 (ちくま学芸文庫)
私の学生時代には現象学的社会学が流行した。その元祖はシュッツだが、よく読まれたのはバーガー=ルックマンの『現実の社会的構成』だった。本書はその方法論を宗教社会学に応用したものだが、アメリカでは珍しくマルクスの影響が強い。

最初に「社会は一種の弁証法的現象である」と宣言し、「疎外」や「物象化」という言葉が出てくる。宗教を「社会的規範の内面化」と考える主観主義は、統計的な実証に乗りにくいので、社会学界では主流にならなかった。いま読むと、古めかしいホーリズムにみえるだろう。

しかし最近の生物学や脳科学には、ホーリズムがよみがえっている。進化の単位は(多レベルの)集団であり、バクテリアでさえ集団(コロニー)が生き残れなければ個体は生き残れない。人間の脳の第一義的な機能も人間関係の調整であり、その構造は集団を考えないと理解できない。これは昔の社会有機体説とは違う進化論的ホーリズムともいえよう。

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