財政赤字とMMTをめぐる論争が活発になってきた。といっても今のところサマーズクルーグマンなどの主流派はみんなMMTに反対で、その批判に傍流の経済学者だけが反論している。これは2年前のFTPLをめぐる論争と似ている。当時は浜田宏一氏が「シムズ理論」を財政出動の根拠にしたのに対して、ほとんどの経済学者は反対だった。政府(および中央銀行)が長期金利をコントロールできるという前提が成り立たないからだ。

財政インフレをコントロールするには、インフレ目標は役に立たない。これは中央銀行が金利で物価を連続的に調節するものだが、財政が悪化してインフレになったら、金利では調節できないからだ。この点はサマーズもクルーグマンも同じで、財政破綻による金利上昇とインフレは不連続に起こるというが、その「臨界点」はどこだろうか。

ブランシャールは、政府債務のGDP比は財政危機の尺度にはならないという。「最適な政府債務の水準」は理論的に存在しないからだ。MMTのような非伝統的な財政政策が成功するかどうかを決めるのは投資家の心理だが、アメリカの長期金利をみるかぎり、今のところ心配している投資家はほとんどいない。

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