ニーチェ2 (平凡社ライブラリー)
感性より理性が重視されるようになったのは、近代ヨーロッパに固有の現象である。その原因はニュートン以来の科学の勝利だ。キリスト教は世界を説明して意味を与えるシステムだが、科学によって世界が合理的に説明できるようになると、アドホックなキリスト教の説明は説得力をなくし、人生は意味を失う。

それがニーチェのいうニヒリズムだが、彼はそれを単なる世俗化と考えたわけではない。ニヒリズムが深刻な問題になったのは、感性を超える普遍的な真理が存在するというキリスト教の原理が信用を失ったからで、その意味でニヒリズムの元凶はキリスト教(パウロ主義)にある。ニーチェによればキリスト教は「民衆向けのプラトニズム」なので、本質的な問題はプラトンにある。

ニーチェが否定したのはヨーロッパのニヒリズムであり、それはプラトン以来のヨーロッパの哲学を否定する壮大な思想だった、というのがハイデガーの評価である。ニーチェがそれに対比したのは、ソフィストだった。プロタゴラスの「万物の尺度は人間である」という命題に、ヨーロッパのニヒリズムを乗り超える契機をニーチェは見出した。プロタゴラスが万物の尺度としたのは「臨在性」だった、とハイデガーはいう。

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