ソフィストとは誰か? (ちくま学芸文庫)
ソフィストは古代ギリシャのソクラテス以前の思想家、という程度しか知らない人が多いだろう。日本でソフィストを主題にした研究書は、本書の前には1冊しかない。この原因は、プラトンがソクラテスを「最初の哲学者」として描いたとき、それと対比して彼以外の思想家に「詭弁をもてあそぶソフィスト」というレッテルを貼ったためだ。

しかし当時そういう学派の対立があったわけではなく、ソフィストがソクラテスを攻撃したわけでもない。彼らの仕事は民会や法廷で弁論を駆使して人々を説得することだったので、真理には興味をもたなかった。ソクラテスのように真理を語って告発者を論破しても、裁判に負けては意味がない。必要なのは多くの民衆を味方につけることなので、ソフィストは逆説や背理法などさまざまなレトリック(弁論術)を駆使した。

政治で何が真理かはわからないので、大事なのは聴衆の感情を読み取って即興的に言葉をつないでいく技術や、民衆の心をとらえるタイミング(時宜)である。それは哲学のような時を超えた真理ではなく、書物にも残らないが、よくも悪くも民主政を動かした。古代ギリシャの昔から、政治を動かしたのは感情をあやつる技術だったのだ。

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