来年1月からのアゴラ読書塾は「感情の科学」というテーマだが、人間を動かすのが理性を超える感情だという思想は新しいものではない。ニーチェはロゴスを超える「力への意志」が人類を動かすと考え、フロイトは意識を超える「無意識」が人間を動かすと考えた。こういう二元論は20世紀の思想に大きな影響を与え、構造主義やポストモダンにも受け継がれている。

ドゥルーズ=ガタリはフロイト的な発想で資本主義を精神分析し、「欲望機械」としてのグローバル資本主義が国家を破壊すると考えた。彼らは非合理的な感情を「コード化」して抑圧するのが国家であり、それをイノベーションで破壊して「脱コード化」する資本主義との矛盾が分裂病(統合失調症)をもたらすと主張した。

しかし最近の脳科学が示すのは、逆に感情が人格を統一し、理性をコントロールしているということだ。感情をつかさどる機能を失った患者は対人関係が崩壊し、支離滅裂な言動を繰り返すようになる。その知的能力が保たれていても、社会人としての生活ができなくなる。「私は私である」という同一性を維持しているのが感情なのだ。

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