原子力の歴史を振り返ると、初期には無限の夢が語られていた。1954年に原子力委員会(AEC)のストラウス委員長は原子力によって「電気代は測るには安すぎる(too cheap to meter)ようになるだろう」と述べ、1968年にシーボーグAEC委員長は「2000年までに世界のほとんどの国の電力は原子力で発電されるようになるだろう」と語った。

Di3lNo2U0AARY8J原子炉は内燃機関よりはるかに効率が高く、高速増殖炉でエネルギー源は無限に供給できる。人類は「原子力駆動」の宇宙船で火星旅行し、原子力で冷暖房完備の地下都市で暮らすようになるだろう、とシーボーグ(ノーベル物理学賞受賞者)は予言した。原子力エンジンが小型化されれば、船や自動車やロボットにも搭載されるだろう。

1952年に生まれた鉄腕アトムの動力は核融合で、10万馬力。トランジスタが集積回路になって劇的にコストが下がったように、原子力のコストも低下すると予想され、原子力船や原子力自動車が開発された。原子力のポテンシャルは化石燃料の100万倍以上であり、安全装置に多少カネがかかっても、その優位性がゆらぐことはない、と物理学者は考えた。それが挫折したのはなぜだろうか。

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