モラル・エコノミー:インセンティブか善き市民か
ゴーンの強欲を指弾するワイドショーは合理的だ。利己的な欲望を追及する悪者を憎む感情は、類人猿にもみられる本能だからである。こういう利他的感情は多くの未開民族にもみられるが、新古典派経済学の想定するように個人の欲望だけを最大化する利己的行動はほとんどみられない。

これは著者が多くの社会実験で実証したが、意外に重要な発見である。たとえば猿がもらったキュウリを投げ返す行動は合理的とはいえないが、不公平に怒る感情は必要だ。餌を独占する利己的な猿を放置すると、集団が滅亡してしまうからだ。そういう遺伝的な感情を文化的に制度化したものが道徳や宗教である。

近代社会では合理性だけが普遍性をもち、道徳はそれぞれの社会に特殊だとされているが、強欲を憎む感情も自己犠牲を好む感情も世界共通だ。市場やデモクラシーを動かすのが理性ではなく、大衆の感情だという事実も普遍的なので、そういう感情がどのように(遺伝的・文化的な)進化で生まれるのかを解明する「感情の科学」が必要だろう。

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