世間では「ゴーンは所得を隠して会社に豪邸を買わせた強欲な経営者」というイメージができているようだが、社宅は逮捕容疑とは無関係だ。役員報酬の虚偽記載は違法だが、彼が巨額の報酬をもらっていたこと自体を批判するのはおかしい。疑惑の指摘されている2011~15年の彼の役員報酬をルノーと合算すると、年平均1460万ドル。GMとほぼ同じで、クライスラーやフォードよりはるかに低い。

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世界の自動車メーカーのCEOの年収(単位100万ドル)Bloomberg調べ

これを安いとみるか高いとみるかは、その基準による。フォードはゴーンにCEO就任を打診したことがあるが、そういう「経営者市場」の相場でみると、ゴーンの日産CEOとしての年収10億円は安い。「これぐらい払わないと優秀な人材は採れない」という彼の言い分にも一理ある。

「巨額の役員報酬は生産性に見合わない」という批判も強いが、これも何を生産性の基準とするかによる。ゴーンの役員報酬は日産の平均賃金700万円の140倍だが、経営者の生産性を労働時間で測ることはできない。経営者を生産要素と考えると資本財に近いので、ゴーンが企業価値をいくら上げたかを基準にすることが考えられる。最新鋭の工場で企業価値が20億円上がるなら、その工場の建設に10億円払うことは合理的だ。

1999年にゴーンがルノーから派遣されたとき、日産の負債は2兆円で債務超過の危機に瀕していたが、今の時価総額は約4兆円。20年前の企業価値をゼロとすると、彼は4兆円の価値を生み出したことになる。この20年間に累計200億円の役員報酬をもらったとすると企業価値の0.5%だから不当に高いとはいいきれないが、問題は企業価値の増加のうちゴーンの貢献はどれだけかということだ。

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