道徳性の起源: ボノボが教えてくれること
日産の事件についてのマスコミの論評をみると「何が事実か」には関心がなく、「ゴーンは強欲だ」とか「会社を私物化した」という類の決めつけが多い。読者には「善か悪か」という価値判断が、事実認識より強くアピールするからだろう。これは「犯罪の認定は事実にもとづかなければならない」という近代国家の原則とは違うが、ほとんどの社会では「敵か味方か」で正義が決まる。

これには遺伝的な根拠がある。狩猟採集民が草原で見知らぬ男と出会ったとき、彼が何者であるかを確認している間に、向こうが石を投げてきて殺されるかもしれない。まず敵か味方かを識別して敵を攻撃し、味方とは協力する感情が、反射的な「速い思考」になったと考えられる。

そういう感情を道徳と呼ぶとすれば、最近の実証研究では、類人猿にも道徳があることがわかってきた。猿は利己的に行動するだけではなく、必要なときには他の猿と協力する。他の猿と平等に扱ってもらわないと怒る「公平」の感情も持っている。この実験では、隣の猿と同じ餌をもらえなかった猿は、怒って餌を投げ返す(13:00以降)。


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