人類進化の謎を解き明かす
人類の歴史の大部分はつねに移動する狩猟採集社会だったので、脳はそれに適応するように進化したが、ここ1万年ぐらいの新石器時代以降は定住社会なので、文化はそれに適応した。つまり人間は遺伝的には移動に適しているが、文化的には定住するように進化したのだ。この矛盾が、現代人の行動にも影響を与えている。

狩猟採集社会で移動する集団(band)の規模は50人程度で、それより小さいと外敵から身を守れないが、あまり大きいと集団の中で紛争が起こる。このため遺伝的には150人程度が限界だが、定住社会ではそれをはるかに超える人数が集団で暮らすようになり、紛争やストレスが多くなった。それを解決するしくみが(広い意味の)宗教である。

狩猟採集社会にも同族意識による信仰(シャーマニズム)はあり、共同体の内部で紛争が起こると、その長(シャーマン)が調停し、定期的に祝祭や儀礼で人間関係をリセットした。しかし定住して集団が大きくなると、そういう素朴なしくみでは維持できないので、体系的に世界観を共有する宗教ができた。この点で新石器革命は「宗教革命」だったと著者はいう。

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