マーガレット・サッチャー: 政治を変えた「鉄の女」 (新潮選書)
サッチャー首相とレーガン大統領が戦後の世界政治を変えたことには疑問の余地がないが、それは「新自由主義」といわれるほど普遍的な主義だったのだろうか。少なくともサッチャーに関しては、彼女が経済政策について最初から信念をもっていたとは考えにくい。本書も指摘するように「サッチャリズムは20世紀後半にイギリス社会が直面した状況から生み出された、すぐれて歴史的な産物なのである」。

のちにマネタリズムとかサプライサイド経済学と呼ばれる政策を彼女が実行したのは、1970年代の「英国病」が完全に行き詰まった状況で、他に手段がなかったためだ。最大の敵は長期にわたってストライキを繰り返す労働組合、特にその中核である炭鉱労組だった。この点では保守党内の意見は一致していたが、違うのは手法だった。

ヒース首相は保守党の本流だったが、イギリス的な紳士だったので、炭鉱労組との対決を回避した。彼は財政出動で失業とインフレを止めようとしたが、スタグフレーションが悪化し、それを所得政策などの介入で止めようとして党内の反発を呼んだ。おりからの石油危機でイギリス経済が崩壊する大混乱の中で、党内の異端だったサッチャーが「反ヒース」の急先鋒としてかつぎ出されたのだ。

続きは10月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。