渡邉恒雄 メディアと権力 (講談社文庫)
来年10月に消費税が10%に引き上げられるとき、軽減税率が導入される予定だ。圧倒的多数の専門家がこれに反対しているが、マスコミはまったく取り上げない。新聞が軽減税率の対象になっているからだ。これをリードしてきたのは読売新聞であり、その社論を決めるのは92歳の「主筆」である。

こういう点で、読売の影響力は意外に大きい。朝日新聞が戦後日本の「表の国体」を代表したとすれば、読売は自民党を中心とする「裏の国体」の代弁者だった。朝日の左翼的な美辞麗句は、論壇では多数派だったが、政治的には多数派になれなかった。それは既得権を守って現状を維持する、自民党的な日本人の本音をとらえることができなかったからだ。

渡辺恒雄を通じて本書の描く読売の戦後史は、およそジャーナリズムとは縁遠い、政治部と社会部の派閥抗争の歴史だ。渡辺は「番記者」として得た自民党の権力を利用して社内で出世し、社内で得た地位を利用して自民党を動かした。こういうきわどい権力ゲームを演じるのは、特異な才能である。彼もたびたび危機に直面したが、きわどく生き延びた。

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