北海道は地震によって全世帯が大停電という前代未聞の事態になったが、これは地震の発生した午前3時の消費電力300万kWのうち、震源に近かった苫東厚真火力発電所(165万kW)の送電設備が壊れて3基がすべて送電できなくなり、その影響で他の火力発電所も送電を停止したためだ。本州との連系線も(起動する電力がなくて)動かなかった。

この直接の原因は苫東の変電所に事故が起こって送電網から切り離され、周波数が低下したことだ。電力網は需要と供給が一致しないと周波数が乱れ、設備が壊れるおそれがあるため、送電が自動的に遮断される。このため苫東につながっていた他の系統も、連鎖的に停止したものだ。苫東に負荷を集中させた北海道電力のマネジメントにも問題があるが、これを「電源の分散配置を怠った」と批判するのは筋違いだ。

供給が不安定になる最大の原因は、泊原発(207万kW)が安全審査中で動かせないことだ。泊が動いていれば深夜のベースロードを供給するので、苫東が落ちても全道に波及することはなかっただろう。泊は震度2だったので、緊急停止しなかったはずだ。分散配置した電源の半分が動かせない「片肺飛行」が、今回の事故の原因だ。

しかし泊の安全審査は、今年の冬までには終わりそうにない。原子力規制委員会が「12~3万年前から断層が動いたかどうか」を調査しているからだ。真冬の北海道でまた大停電が起こったら、多くの凍死者が出るだろう。人命尊重の観点から優先すべきことは何か、安倍政権が決断するときではないか。

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