電力と政治 上: 日本の原子力政策 全史
原子力の問題は、政治の問題である。だから「電力と政治」の関係を学問的に解明することは重要だが、政治的なバイアスをまぬがれることはむずかしい。『日本の原子力外交』はその貴重な例外だが、本書は第2章が「活発化する反原発運動と暗躍する原子力ムラ」と名づけられているように、バイアスを隠そうともしていない。

中身も新聞記事の孫引きばかりで、学問的オリジナリティはないが、網羅的な新聞の切り抜き帳としては便利だ。特に重要な転換点となった2003年の核燃料サイクル見直しについては、電力会社の中でも意見がわかれていたことを指摘している。技術部門は核燃料サイクルを推進しようとしたが、企画部門は採算性に疑問をもっていた。

最初に核燃料サイクルを止めようとしたのは、電力会社だった。2002年5月に、東電の荒木会長・南社長・勝俣副社長が、経産省に六ヶ所村再処理工場の稼働中止を申し入れ、広瀬事務次官と大筋で合意したという。ところが8月に原発のトラブル隠しが発覚し、後任の村田事務次官が荒木と南を辞任に追い込んだため、話がこじれた。

2003年には資源エネルギー庁と電力会社の首脳が、核燃料サイクル撤退について何度も会合を開いたが、物別れに終わり、電力会社は再処理コストを電気料金に転嫁しようとした。経産省はこれに反対し、「19兆円の請求書」をマスコミに配布して、核燃料サイクルをつぶそうとした。これに対して電力会社は自民党の族議員を使って反撃し、戦いは経産省の敗北に終わった。

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