異端の時代――正統のかたちを求めて (岩波新書)
正統という概念は日本人にはなじみがないが、キリスト教では「正統か異端か」をめぐって、血で血を洗う戦争が続けられた。丸山眞男はこの概念を日本にも適用しようとして、教義上のO正統(Orthodoxy)と事実上のL正統(Legitimacy)という対概念を考えたが、40年かかっても著作は完成しなかった。本書の前半は、キリスト教神学の立場からこれを批判する。

正統としてもっとも有名な三位一体説は聖書に根拠はなく、イエスを神と考えるローマ帝国の民衆の信仰と、神は父なる神だけだとするユダヤ教の教義の妥協だという。それは初期には多くの人々の合意によるL正統だったが、教義として確立するとO正統になり、それを批判する人々は異端として排除されるようになった。

つまりO正統とL正統に本質的な違いはないのだ。これは丸山批判としては成功しているが、それを現代に適用する後半は、お約束の反原発とか新自由主義批判が出てきて、陳腐になってしまう。むしろ問題が大きいのは(本書が避けている)日本国憲法だろう。それを「押しつけ憲法」だと考える人々は民主的正統性がないと批判し、それを守ろうとする人々は「八月革命」で正統性が与えられたという倒錯した論理で擁護する「ねじれ」が続いてきた。

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