第二次世界大戦 アメリカの敗北 米国を操ったソビエトスパイ (文春新書)
「コミンテルンのスパイがルーズベルトを操った」という話はネトウヨの愛好する陰謀史観だが、まったく荒唐無稽というわけでもない。少なくとも1995年から公開され始めた「ヴェノナ」と総称される膨大な秘密文書(ソ連と米国内のスパイの暗号電文)によれば、ルーズベルト政権の中枢に多くのスパイがいた事実が明らかになっている。

その最大の大物が、ハリー・ホワイト(財務省ナンバー2)だった。彼はハル・ノートの原案を書いた人物として知られているが、財務長官モーゲンソーの腹心だった。ルーズベルトもモーゲンソーも経済には素人だったので、ハーバード大学の経済学博士だったホワイトが、ニューディールを立案した。彼がソ連に情報を提供したのは、社会主義に対する共感があったためだろう。

1945年初めには、ルーズベルトは癌で政治的な判断ができなくなっていたので、彼の信頼するモーゲンソーが(実質的にはホワイトが)戦後処理案をつくった。彼らはユダヤ系だったので、ナチスを激しく憎み、ドイツの工業を破壊して農業国にする占領案「モーゲンソー・プラン」をつくった。これによってドイツの工場は壊滅し、ソ連軍が食糧を国外に持ち出し、多くのドイツ人が餓死した。その犠牲者は、戦後5年間で900万人と推定されている。

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