そしてドイツは理想を見失った (角川新書)
戦後の日本とドイツは、似ているようで違う。似ているのは第2次大戦で敗戦国になったことだが、その負の遺産を処理する方法はかなり違う。日本では天皇制が残ったが、ドイツは「第三帝国」が国家として消滅したため、過去を100%否定した。ナチを肯定することやホロコーストを疑うことは今も犯罪であり、「ヘイト」を掲載したSNSに最大5000万ユーロ(約60億円)の罰金を課す法律が昨年できた。

そのドイツに登場したのが、移民排斥を主張するAfD(ドイツのための選択肢)である。昨年の総選挙で、AfDが第三党になったことは、世界に大きな衝撃を与えた。メルケル首相の与党CDU(キリスト教民主同盟)と野党第一党SPD(社会民主党)の政権協議は難航し、今も政権は不安定だ。

日本の国会では政治理念は争点にならず、スキャンダルばかり議論しているが、ドイツは自国を「理想の国」にしようという意識が強く、政治家は理念を掲げる。このためメルケルは難民を無条件に受け入れたが、犯罪が増えた。彼女の「脱原発」も理想主義だったが、CO2は減らないで電気代が大幅に上がった。そういう偽善に対する国民の不満を集めたのがAfDだった。

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