夏の合宿でも議論する予定だが、戦後の日本に二大政党ができなかったのは中選挙区制のせいではなく、政策の対立軸がなかったからだ。戦前も中選挙区制だったが、政友会と民政党の二大政党で政権交代が起こった。それは税金を使う政府の党である政友会と、納税者を代表する民政党が対立したからだ。

議会は近世ヨーロッパで、納税者(地主・ブルジョア)と税を使う貴族の対立から生まれた制度だ。アメリカの共和党と民主党も、イギリスの保守党と労働党も、納税者の党と使う党で、その対立は「福祉国家」になると先鋭化した。自民党の支持基盤も高額納税者だったので、1980年代以降は財政再建が最大の課題になり、野党はそれを「新自由主義」と批判した。

ところが安倍首相は、日銀の財政ファイナンスで国債発行の上限を踏み超え、「大きな政府」に舵を切った。それは今までの常識では金利上昇とインフレで財政破綻を招くはずだが、今のところ金利は下がっている。これは財政の歴史の中では革命的な出来事だが、安倍首相が斬新な経済理論でやっているようにはみえない。この革命を可能にしたのは何だろうか。

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