7月からのアゴラ読書塾のテーマは「丸山眞男と戦後日本の国体」(申し込み受け付け中)。いま丸山を読む人は少ないが、あなたの心の中には丸山が住んでいる。たとえば「戦争を起こしたのは軍部やファシストで、それをリベラルな知識人が防げなかった」という丸山の「悔恨共同体」は、いまだに朝日新聞を初めとするマスコミの歴史観だ。

しかし戦争を指導したのはファシストではなく、東京帝大や朝日新聞のリベラルだった。帝大法学部教授の宮沢俊義は「大政翼賛会は合憲だ」という論文を発表し、朝日新聞論説委員の笠信太郎は戦時体制の設計図を書いたが、彼らは戦後は丸山とともに全面講和や憲法擁護の論陣を張った。それが戦後政治のアジェンダになり、今も国会では不毛な憲法論争が続いている。夏の合宿では、そういう問題を論じたい。

「1945年8月に革命が起こり、国民が主権者として憲法を制定した」というのも丸山に始まる神話だ。いまだに長谷部恭男氏は「8月革命が憲法学界の通説」だというが、日本国憲法は大日本帝国憲法73条にもとづいて勅令で召集された帝国議会で、2/3以上の多数で可決された。それを書いた実質的な主権者はアメリカであり、革命なんか起こっていない。

丸山が民主主義を「永久革命」と呼んだのは、このように矛盾した戦後民主主義を国民の行動で変えていこうという理念だったが、革命は永遠に続くものではない。戦後民主主義の青春期は60年安保で終わったが、丸山のつくった神話は日本人の潜在意識に定着し、今も人々を呪縛している。

続きは6月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。