そもそも物価が上がるのがなぜ良い事なのか、私にはまだ納得できていません。目的が生活水準の引き上げなら、賃金は上がらなくても、物価が下がり消費行動の選択潮が増えれば、その目的は達成されます。メルカリ効果等も見えないところで庶民の消費生活を支えています。経済学者は考え直すべきでは? https://t.co/NIPq78kURq
— 松本徹三 (@matsumotot68) 2018年6月22日
これはもっともな疑問だが、教科書的なマクロ経済学(DSGE)には「物価上昇が望ましい」という理論は存在しない。日銀の黒田総裁も「インフレ目標2%がグローバル・スタンダードだ」というだけで、その根拠は説明したことがない。それが望ましいのは、次のような「異常事態」が起こっている場合だ。
1.名目賃金の下方硬直性が強い
2.自然利子率がマイナスになっている
3.コーディネーションの失敗が起こっている
1は初等マクロ経済学の教科書にも書いてあるが、名目賃金が労使交渉で決まる場合、賃下げは困難なので、インフレで実質賃金を下げ、労働生産性の上がった労働者だけ賃上げすることで調整がやりやすくなる。ただ定常的なインフレになると、労働者はそれを織り込んで賃上げを要求するので効果はなくなる。
2の自然利子率というのは経済に中立的な金利で、これがマイナスになっていると、名目金利がゼロ以下にならないときは「意図せざる金融引き締め」になる可能性がある。こういう場合はインフレで実質金利をマイナスにする意味があるが、最近の日銀の計測では、自然利子率は0.3%程度であり、マイナス金利も可能なので、インフレにする意味はない。
3がおそらく黒田総裁の想定しているケースで、「ピーターパンが空を飛べないと思うので飛べない」という均衡と「飛べると思うので飛べる」という複数均衡があるとき、だれもが空を飛べると期待すると飛べる可能性がある。問題は空を飛ぶ能力があるのかどうかである。
その能力はマクロ経済的には、潜在成長率で示される。供給能力に余裕があり、需給ギャップが大きい場合は、投資が増えると成長できるが、潜在成長率が小さい場合は成長できない。供給能力がボトルネックになるからだ。
日銀の計測でもここ数年、潜在成長率は1%程度で、実質成長率とほとんど同じだ。こういうとき、いくら金融緩和しても投資需要が伸びないので、企業貯蓄に回り、インフレにもならない。一時的には政府が成長させることも可能だが、潜在成長率は上がらない。「よい均衡」が存在しないときは、空を飛べると思っても飛べないのだ。
2の自然利子率というのは経済に中立的な金利で、これがマイナスになっていると、名目金利がゼロ以下にならないときは「意図せざる金融引き締め」になる可能性がある。こういう場合はインフレで実質金利をマイナスにする意味があるが、最近の日銀の計測では、自然利子率は0.3%程度であり、マイナス金利も可能なので、インフレにする意味はない。
3がおそらく黒田総裁の想定しているケースで、「ピーターパンが空を飛べないと思うので飛べない」という均衡と「飛べると思うので飛べる」という複数均衡があるとき、だれもが空を飛べると期待すると飛べる可能性がある。問題は空を飛ぶ能力があるのかどうかである。
その能力はマクロ経済的には、潜在成長率で示される。供給能力に余裕があり、需給ギャップが大きい場合は、投資が増えると成長できるが、潜在成長率が小さい場合は成長できない。供給能力がボトルネックになるからだ。
日銀の計測でもここ数年、潜在成長率は1%程度で、実質成長率とほとんど同じだ。こういうとき、いくら金融緩和しても投資需要が伸びないので、企業貯蓄に回り、インフレにもならない。一時的には政府が成長させることも可能だが、潜在成長率は上がらない。「よい均衡」が存在しないときは、空を飛べると思っても飛べないのだ。