近代日本の構造 同盟と格差 (講談社現代新書)
坂野潤治氏の実証的な本は勉強になるが、最近の本は政治的主張が前面に出て理解しがたい。本書も最初のページで「憲法学者の違憲の声を無視した」安倍政権を糾弾し、それは「日英同盟を想起させる」という。歴史学的な新事実があるのかと思って読んでみると、大東亜共栄圏の「大アジア主義」を肯定する荒唐無稽な話で前半が終わる。

後半は民政党の「保守派」に対して無産政党の「格差是正」が対立したという図式で、1930年代の歴史を語る。後者の元祖は「民本主義」をとなえた吉野作造で、蝋山政道や矢部貞治や宮沢俊義など、東京帝大のインテリが無産政党を支持し、大政翼賛会を指導して総力戦体制を構築した。

そこまでは最近の他の研究と似ているが、著者は保守派を批判する。1936年に革新官僚や陸軍統制派を批判した斉藤隆夫の「粛軍演説」も、資本家や地主の負担を減らそうとする既得権擁護だという。この問題を解決したのは戦争と軍拡と徴兵による「総需要拡大」だったが、なんと著者はそれを支持するのだ。

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