「AIで仕事がなくなる」論のウソ この先15年の現実的な雇用シフト
AI(人工知能)のブームは、これまで3度あった。第1次ブームは1950年代後半から始まったが、この時期にAIの限界(フレーム問題)が指摘され、それはいまだに解決していない。第2次ブームは1980年代の「第5世代コンピュータ」のころで、自然言語処理が主なテーマだった。私も取材したが、まったく実用的な成果が出ないで終わった。

2000年代後半からが今の第3次ブームだが、本書も指摘するように、AIの限界が「深層学習」で解決したわけではない。本質的な問題は、機械は人間より安いのかということだ。たとえば外食レストランで注文をとって食事を出すロボットができたとしても、そのロボットを時給1000円で借りることができないかぎり、人間の仕事はなくならない。

この点では「AI化」に大した意味はなく、すでに「IT化」でコンピュータにやらせたほうが安い事務作業は、かなり置き換えられている。さらにいえば「グローバル化」で、国内雇用が輸入に置き換わっている。つまりこれまで中国人に奪われていた仕事が今後はコンピュータに奪われるわけだが、その基準はAIの性能ではなく、経済的な比較優位である。
これはリカード以来おなじみの話で、コンピュータが人間より絶対優位になるかどうかとは別の問題だ。コンピュータで置き換えられるのは、弁護士や会計士などの付加価値の高い事務的労働で、時給1000円の肉体労働が置き換えられるのは遠い先だろう。本書はあと10年で、雇用が減るのは1割程度と予想する。

「雇用が減る」という表現もおかしい。労働市場が機能していれば、労働需要の減った職種の賃金は下がり、労働者は他の職種に移動するので、文字通り雇用が減ることはない。日本の場合、生産年齢人口がこれから大幅に減るので、雇用減を心配する必要はあまりない。その中身が変わり、所得分配に影響が出るだろう。アメリカのように中間層の所得はあまり変わらず、上位と下位の格差が広がる可能性がある。

ただグローバルにみると人口も総需要もこれから拡大するので、日本の人手不足は移民が補うことになろう。これも今は「技術研修生」という変則的な形でやっているが、これも改革が必要だ。本書は80万人が移民として日本に来ると予想しているが、その国籍や永住権についても考える必要がある。