法学の誕生:近代日本にとって「法」とは何であったか (単行本)
穂積八束といっても、知っている人はほとんどいないだろう。彼は帝国大学法学部の憲法学講座の初代教授で、天皇大権説で「国体」論の元祖となったが、「民法出デテ忠孝亡ブ」に代表される家父長的な法学の元祖とされ、現在の憲法学界ではタブーになっている。本書はその学説を再評価するものだ。

穂積は1880年代にドイツに留学し、プロイセンの公法理論を日本に移植しようとした。このとき彼がドイツ法学の中核と考えたのがナショナリズムで、その根幹には「宗教」があった。神が天地を創造したとか、イエスが復活したとかいう話は荒唐無稽で、ドイツの知識人も信じていたとは思えないが、それが国家の「機軸」だと伊藤博文は考えた。

伊藤の意を受けた穂積は、キリスト教の代わりに万世一系の天皇家を憲法の正統性の根拠とする家族主義国家観をとなえた。それも荒唐無稽だったが、「大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス」という条文の解釈としては、美濃部達吉の天皇機関説より自然だった。穂積は憲法に現実を合わせろという東大法学部の伝統の元祖だが、美濃部はそれを「条文法学」と呼んで批判した。

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