次世代の無線「5G」についての話題がいろいろ出ているが、今ひとつ盛り上がらない。その原因は、用途がIoTなどの業務用無線に限られ、携帯電話などの公衆無線とはあまり関係ないからだ。割り当てられる予定の3.7GHz帯や4.5GHz帯は、今はマイクロ波の固定無線に割り当てられている。直進性が高く減衰が大きいので、ビームを絞らないと届かないのだ。

それをカバーする技術も開発されているが、電波の物理特性は半導体技術でカバーできない。今の高い周波数では、基本的に固定無線やホットスポットのような用途と考えたほうがいい。それはそれでマーケットがあるが、公衆無線よりはるかに小さい。ビームを絞って正確に当てる必要があるので、自動運転のような移動端末に使うのは適していない。

だがアメリカやEUでは、今の携帯端末と同じUHF帯に5Gを導入する計画が始まっている。たとえばTモバイルは、来年にも600MHz帯で5Gを導入する。EUも700MHz帯の割り当てを行う予定だ。そして日本では、UHF帯は大幅に余っている。テレビ局の使っていないホワイトスペースの200MHzを区画整理すれば、5Gで日本は世界のトップランナーになれる可能性もある。
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EU議会でも、2017年6月に700MHz帯を2020年までに5Gに割り当てる方針を決めた。ここは地上デジタルテレビに使われているが、今回の決定で放送局は周波数を政府に返還し、電波を再編する。470~700MHz帯も、2030年までに再編して通信に使う予定だ。放送はこれによってモバイル・ネットワークで行うことになる。

EU委員会は 20 年までにヨーロッパ全域で5Gネットワークを構築するため、2013年に「5Gインフラストラクチャ―・官民パートナーシップ(5G-PPP)」を発足させ、7億ユーロを投資する予定だ。EU委員会の諮問機関である電波政策グループ(RSPG)は「5G戦略ロードマップ」を発表し、UHF帯への電波割り当てを域内で進める計画だ。

日本の地上デジタル放送は欧米と違って既存の放送局が立ち退く必要がないので、一足先に電波の再編ができる。これが競争力の落ちた日本の半導体メーカーが挽回する最後のチャンスだが、民放連がそれを妨害している。

UHF帯の価値は時価2兆円。これを効率的に配分できれば、テレビ業界の既得権なんか大した問題ではない。「立ち退き料」として1000億円ぐらい払ってもいいし、ホワイトスペースの一部を優先的に使う権利を与えてもいい。総務省も、ITUが動き始めたら動くだろう。