論壇の戦後史―1945‐1970 (平凡社新書)
日本の野党は戦後70年以上たっても、大人になることができないが、その黄金時代は1950年代だった。戦後の左翼の出発点は丸山眞男の「悔恨共同体」で、その舞台になったのは岩波書店の『世界』だった。「全面講和」を特集した1951年11月号は、15万部も売れた。この時期の編集長は『君たちはどう生きるか』で今もよく知られている吉野源三郎である。

この背景には、岩波を含む知識人が軍国主義を止められなかったという悔恨があった。講談社を中心とする大衆文化に対抗して、悔恨共同体を結集する場が『世界』であり、それは論壇そのものだった。それはやがて社会主義の代弁者になり、反米運動になった。保守勢力は大人になって合同したが、左翼はバラバラの抵抗運動から脱却できなかった。

「戦後の日本」を代表する悔恨共同体の知識人が「戦前の日本」を代表する岸信介をやっつけるという勧善懲悪のドラマは、60年安保でピークに達したが、岸の退陣で運動は目標を失う。そこには自民党に代わる「もう一つの国家構想」がなかったからだ、と本書は指摘する。戦後の日本は60年安保で夢見るのをやめ、通過儀礼を終えて大人になったのだ。

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