神は数学者か?―ー数学の不可思議な歴史 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫〈数理を愉しむ〉シリーズ)
1854年、数学者ベルンハルト・リーマンは奇妙な幾何学理論を発表した。それはユークリッド幾何学における平行線の公理が成立せず、1点を通って他の直線と交わらない平行線が1本も存在しない理論だった。これは直感に反するが、無矛盾な公理系が構築できる。こうした「非ユークリッド幾何学」は、純然たる論理の遊びと考えられていた。

その50年後、アインシュタインは彼の特殊相対性理論を一般化して重力を「時空のゆがみ」と考えたが、それを数学的に定式化できなかった。彼が友人の数学者に相談したところ、友人がそれはリーマン幾何学で記述できるのではないかと提案した。アインシュタインはリーマン幾何学を知らなかったが、そのアイディアをリーマン空間で記述した一般相対性理論を1915年に発表した。これは1919年の皆既日食のとき、太陽の近傍で光が重力で曲がる現象によって正確に確認された。

数学が自然を正確に記述する先験的な理由はないが、このように数学者が純粋な論理体系として構築した数学理論が、あとから物理現象で実証されることは珍しくない。このような数学の不条理な有効性は多くの科学者や哲学者を当惑させてきたが、古典物理学をまねた新古典派経済学はその例外である。それは数学的には美しいが、実証データにあわないのだ。

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