未完の明治維新 (ちくま新書)
近代社会がデモクラシーによってできたというのは神話である。名誉革命は市民革命ではなく単なる王位継承の争いであり、フランス革命の舞台となった三部会は聖職者と貴族と有産階級の3身分だった。アメリカ独立革命を戦ったのは、各州の支配者であって民衆ではなかった。

デモクラシーは近代国家の必要条件ではないが、それは「自分の国だ」という意識によって国民を総動員する暴力装置としては必要だ。それが全国民である必要はなく、むしろ軍事的に動員できる官僚組織が必要だ。日本の場合、江戸時代を通じて武士という軍事組織が人口の1割近くいたことが幸いだった。

「万機公論に決すべし」はレトリックではなく、武士の総意で列強に対抗するという意味だった。大政奉還したとき、徳川慶喜は藩主議会藩士議会によって「諸侯の公議」で政権の方針を決めようとした。明治維新は農民とも地主とも無関係な「武士のデモクラシー」だったが、それを大きく変えたのが廃藩置県だった。

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