政治の世界 他十篇 (岩波文庫)
丸山眞男が戦後民主主義の担い手として期待したのは「自発的結社」だった。それは大衆社会のバラバラの「原子論的個人」ではなく、地域や企業を超えて連帯する自覚的な個人の集まりとして、デモクラシーを支える「主権者」となるはずだった。彼は1952年の論文「政治の世界」をこう結んだ。
長時間労働で身心を使い果たし、しかも失業の恐怖に不断に襲われている勤労者にとっては、組合への関心すらも日常的になりがちでしょう。そうなると結局民主主義が現実に民衆の積極的な自発性と活発な関与によって担われるためには、どうしても国民の生活条件自体が社会的に保証され、手から口への生活にもっとゆとりが出来るということが根本だということにならざるをえません(強調は原文)。
労働者が政治に無関心なのは「手から口へ」の貧しい暮らしを続けているからであり、彼らが豊かになれば労働組合を支持するようになるだろう。革新政党が弱いのは労働者が貧しいからで、その生活にゆとりができれば彼らの政治意識は高まり、労働組合が近代的個人を結集する「自発的結社」になるだろう――と丸山は予想したが、そこには致命的な見落としがあった。

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