読売新聞が「安倍「放送」改革に潜む落とし穴」という意味不明な記事を書いているが、その中に私の名前が出てくる。
池田氏「放送局の方の出されている資料を見ると、例えば男体山とか、山の奥の話をしているわけです。要するに、日本の国土全体から見ると0・何パーセントの人々のために、物すごく贅沢に電波資源を使っているわけです」(中略)。

競争入札で最高額を示した企業に周波数帯の利用権を与える「電波オークション」の論者として知られる両氏の発言は、筆者の耳には「極論」「暴論」と聞こえるのだが、実は安倍首相のブレーンとしても知られる原座長は、かなり肯定的に受け止めているようだ。
加藤理一郎という記者は、私がここで「電波オークション」を主張していると思っているようだが、これはオークションではなくSFNによる区画整理の話である。私は山の奥の中継局を廃止しろといったのではなく、親局と中継局は同じチャンネルで放送できる(現にしている)という技術的には自明の話をしただけだ。

読売が危機感をもったきっかけは、2月6日の衆議院予算委員会で安倍首相が放送法第4条(政治的中立)の撤廃に言及したことらしい。世界的には多チャンネル化を進めて放送内容の規制を撤廃するのが常識で、放送業界にとっても言論の自由が広がるのだから結構なことだろう。ところが読売は規制の撤廃に反対だという。

加藤記者はこれを「規制のないネットの世界に地上波放送を移行させ、空いた周波数をモバイルなどに有効利用する」と解釈しているのだが、首相も規制改革推進会議もそんなことをいっていない。いまだに民放連が電波改革をこう誤解していることが混乱の原因である。電波を有効利用しても、テレビ局は今まで通り放送を続けられるのだ。

言論の自由に反対する民放連

この改革の本丸は、電波のソフト・ハード分離である。これは私が20年前から提唱してきたことで、インターネット時代には伝送をIPに統一してインフラを問わないという当たり前の話だが、日本の放送業界はこれに強く反対してきた。

それは放送免許によるインフラ独占を守ろうとする点では合理的だったが、今やモバイル端末でもHDTVが見られるようになった。安倍首相がAbemaTVで独占インタビューをやる時代になったので、免許によるインフラ独占には意味がない。

区画整理でUHF帯のあいた帯域に入るのは、地上波テレビではなく汎用の通信である。通信衛星で放送できる時代に、地上波の放送局を新設する国はない。5Gの通信は今は4GHz以上の高い周波数を想定しているが、これは到達距離がきわめて短く、汎用の通信には適していない。

UHF帯の200MHzを5Gに使えば、5Gで既存のモバイル通信をすべて置き換えることも可能で、日本は世界のトップ・ランナーになれる。これが他の国でできないのは、UHF帯に入っているテレビ局を動かせないからだが、日本の地デジはOFDMなので中継局を動かせる。

この優位性は技術者はすぐわかるが、総務省はわからないふりをしているので、民放連も誤解している。読売はそれをさらに受け売りしているので、言論の自由の拡大に反対して、何をいっているのかわからない。

ただ今までもこういう民放連の無理な要求が通ってきたので、放送改革は政治的には鬼門である。安倍政権が電波に手をつけたのは「テレビ局に権力の恐さを思い知らせてやろう」という不純な動機もあったと思われるが、政権が死に体になると無理だ。同じ理由で、テレビ・新聞は全力で安倍政権を倒そうとすると思う。