竹内純子さんの出演した「あさイチ」を見て思ったが、原子力のリスクはもう民間企業には持ちきれないのではないだろうか。この番組で柳沢解説委員は「原発のコストが高い」理由として、福島第一原発の廃炉などに21.5兆円かかるという話をあげているが、これは初歩的な錯覚である。

廃炉費用は1回の事故のサンクコストであり、今後のリスクを計算するには、同じような事故がどれぐらい起こるかという確率をかける必要がある。それが政府の想定(500炉年に1回)ぐらいだとすると、苛酷事故のリスクは1基あたり140億円。原発の建設・運用費の1~2%で、保険でカバーできる。

ただ電力会社としては、火力発電のような普通の発電所とは違う。いくら確率が低くても、起こったら経営が破綻する。各地方のエリートである電力会社には、悪者扱いされるダメージは耐えられない。本当は電力会社の経営者も火力発電のほうが好きだが、国策として無理やり続けているのだ。こういう状態で原発の新設は無理だし、産業が衰退して人材も枯渇する。

特に東電が「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」という形で事実上、国有化されている無責任体制はよくない。東日本のBWR(沸騰水型原子炉)を国が買収して「原子力公社」にする案は、以前から関係者が話題にしているが、まじめに検討してもいいのではないか。

「国策民営」の限界

日本の原子力開発は「国策民営」と呼ばれ、国が方針を示して電力会社がコストを負担する方式でやってきた。これは技術開発に巨額の投資が必要で、立地にも国の協力が必要な原子力産業にとってはやむをえない選択だった。

だが原子力をめぐる環境は、3・11で大きく変わった。原発の再稼動も予定より大幅に遅れ、規制基準の強化でコストも上がった。運転開始から40年で廃炉にする「40年ルール」の適用で、廃炉が決まった原発も6基ある。今の状況で原発新設という悪役を買って出る電力会社はない。漸減する原発に民間で投資するインセンティブがないが、バックエンドなどの固定費が大きいので、廃止するのは効率が悪い。

「原子力公社」構想は日本原子力発電を受け皿会社にして、BWR(沸騰水型原子炉)の東電・中部電力・東北電力・北陸電力・北海道電力の原子力部門を国営化しようというものだ。東電と中部電力はすでにJERAという形で火力発電事業を統合しており、原子力事業を統合することに強い抵抗はないというが、国営化には巨額の国費が必要になる。

しかし支援機構にはすでに国が出資し、交付国債という形で東電に約8兆円の融資が行われている。廃炉・賠償・除染にかかる21.5兆円を東電が今後40年かけてすべて負担する、という政府の計画を信じる人は少ない。最終的には、数兆円規模の国費投入が行われるだろう。つまりこれは国の支援を間接的にやるか直接的にやるかだけの違いである。

その最初のステップとして、東電を破綻処理して存続会社と清算会社に分離し、後者に原子力部門を含める経営再編も専門家が提案している。無責任体制を改め、東電を電力事業に集中させる点では、原子力公社も選択肢に入る。資金は建設国債で調達することもできるし、炭素税をかけることもできる。FITに使っている毎年2兆円の補助金を回してもよい。

もちろん電力会社に国費を投入することは電力自由化にも逆行して望ましくないが、今のように不透明な形で国費を投入するのと、どっちがましかという相対評価である。少なくとも東電だけでも分社化し、支援機構の国費を原子力公社に付け替えることはできないだろうか。