昨今の憲法論争で「文民統制」という話がよく出てくる。軍人より文民のほうが平和主義だと思われているのだろうが、歴史的には必ずしもそうではなかった。日本は鎌倉時代から700年以上も武士による軍事政権が続いた、世界でも珍しい国である。特に江戸時代は、徳川幕府の軍事政権で長い平和が続いた。丸山眞男は1966年の講義でこう述べている。
徳川時代の世界史的な逆説は、爪の先まで武装したこの体制の下において、二世紀半以上にわたって「天下泰平」の安定性が維持されたことである。高度に発達した文明の段階において、「閉じた社会」の人為的造出がこれほどすみずみまで計画され、しかもこれほど長期的に成功した例は稀である。
今でも途上国には軍事政権が珍しくないが、それが長期政権になることはまずない。軍政を支えているのはむき出しの暴力なので、それより大きな暴力をもつ軍人が出てくると倒れるからだ。ところが徳川幕府は、軍人が軍人を支配することによって長い平和を守った。この「世界史的な逆説」を理解することが、現代の日本を考えるときも重要である。

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