アゴラで指摘した送電線の話はテクニカルだが、今後のエネルギー改革で重要なので、経産省の資料で簡単に説明しておこう。朝日新聞の「利用率2割」は誤報である。基幹送電線は二重化され、100%は使えないからだ。送電線のルールは、次のようになっている。
電力系統には、たとえ1本の送電線が故障した場合でも、電気をほかの送電線に流してカバーできるようにすることで、停電を防ぐしくみになっています。これは「N-1(エヌ マイナス イチ)基準」とよばれる考え方に基づくもので、日本だけでなく、欧米など国際的にも広く採用されているものです。
送電容量は設備の予約なので、実際に使われていなくても「空き容量ゼロ」になる。今は図のように回線を先着順に割り当てているが、これだと後から申し込んだ再エネ業者が接続できなくなる場合がある。

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このとき「空き容量ゼロ」に見えても「緊急時用に確保」した設備を使うとゼロではないので、次の図の②の部分の送電容量を動的に割り当てようというのがコネクト&マネージである。ただし100%使うと回線事故の場合に大停電が起こるので、緊急時には停止するなど優先順位をつけ、休眠している設備の割り当て(①)を減らす。qqti-26np8bz1
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ゆがんだ電力自由化が「休眠設備」を生んだ

この休眠設備の大きな原因は再稼動できない原発だが、そのもっとも効率的な解決法は、原発を再稼動して操業率を上げることだ。福島第一原発事故は、全国の原発を止める理由にはならない。

もう一つの原因は、建設されて稼働していない太陽光や風力だ。ピーク時の発電能力(kW)だけをみると、原発や火力と洋上風力が同じにみえても、送電量の積分値(kWh)でみると、再エネは1~2割しかない。しかも再エネ業者は供給責任を負っていないので、設備投資しないで電力会社のインフラにただ乗りできる。

再エネ業者には「電力会社の既得権を100%認める今の割り当ては不公平だ」という不満があるようだが、電力会社が敷設した送電線は私有財産であり、原発が動いたら、それが優先される。再エネ業者はこれにただ乗りするために、反原発派と一緒になって再稼動を阻止しているのだ。

最大の問題は、大部分の原発を止めたまま、電力会社に供給責任を負わせて「発送電分離」した、いびつな自由化にある。送電線の敷設にはオークションが導入されているが、現状では価格メカニズムが機能しない。その原因は、FIT(固定価格買い取り制度)が再エネに過剰なインセンティブを与え、送電線の需要を増やしているからだ。再エネの割り当てを見直すとともに、FITを早期に廃止する必要がある。