アデナウアー - 現代ドイツを創った政治家 (中公新書)
ドイツ放送協会(ZDF)が「もっとも偉大なドイツ人」の人気投票をしたところ、182万人の投票で3位はマルクス、2位はルターだったが、それをおさえて第1位になったのはアデナウアーだった…といってもピンと来ない人が多いだろう。彼は戦後初の西ドイツの首相として、1949年から14年間にわたって戦後復興を指導した。その最大の特徴は西側結合と呼ばれる西欧寄りの政策だった。

それは日本でいうと「単独講和」のようなもので、当初は国民の評判はよくなかったが、アデナウアーはNATO加盟を急ぎ、再軍備を実現した。それが成功した最大の原因は、ドイツが分断国家だったことだろう。西ドイツは軍備もなく、英米仏ソ4ヶ国に統治されていた。冷戦の激化で多くの国民が「主権回復」というアデナウアーの目標に共感したので、1955年に西ドイツはNATOに加盟し、基本法も改正した。

日本では、吉田茂は安保条約を結んだが、憲法改正は拒否した。岸信介は安保条約をNATOと同じような相互防衛条約に改正しようとしたが、憲法の制約でできなかった。西ドイツはNATOで核兵器をアメリカと共有したが、日本は「核を持ち込ませない」という建て前で、なし崩しに軍備を強化した。この50年代の「初期設定」の違いが、その後の日独の運命を大きくわけた。

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