電波改革が混乱しているのは、オークションが過剰に政治的に取り上げられたためだと思う。通信業界ではオークションは世界的に当たり前なので、それほど強い反対はなかったが、日本では民放が強く反対してきた。電波をオークションで割り当てると、マードックやクアルコムのような外資が入ってくることを心配したのだ。県域放送で過少資本の民放は、大資本とは競争できない。

それは1990年代までは、根拠のない心配ではなかった。国内でも松下電器やソニーが、テレビに参入しようとした。これを民放連は政治的に阻止したが、松下はWOWOWで放送衛星に参入し、ソニーはスカパーで通信衛星に参入した。このころは地上波をふさいで、新たなチャンネルを締め出すことが重要だった。地デジで最大8chしか使っていないUHF帯が40chあいたときも、チャンネルが全部ふさがっていることにしたのだ。

しかし時代は変わった。いま地上波テレビに入ってくる局はない(新規参入は1993年のMXが最後)。放送なら中継器1本で全国に放送できるCSのほうがはるかに効率的なので、いま地上波をテレビに割り当てる国はない。電波が足りないのは、モバイル・インターネットである。ところが民放連がいまだに地上波に参入する「幻の黒船」を恐れているおかげで、貴重な電波が浪費されている。

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