戦後を疑う (講談社文庫)
清水幾太郎は60年安保のスターで、その後「転向」した人物として評判が悪いが、彼の話は「自分はなぜ転向したか」を語る資料としてはおもしろい。戦前の日本を否定しようとした戦後知識人の価値観のコアにあったのは、治安維持法への復讐だという。

それは戦前の国体の象徴だったので、彼らの「二つの公理」は、治安維持法のタブーだった共和制社会主義で、「憲法擁護」というスローガンは戦術的なものだった。共和制は天皇制の廃止という意味だが、憲法1条で天皇は「象徴」として残ったので、彼らは「国民主権」を主張した。社会主義は憲法29条(財産権の保障)に反するが、資本主義を否定しないと進歩的知識人にはなれなかった。

しかしこういう復讐のルサンチマンは、治安維持法がなくなって言論が自由になると忘れられる。一時は英雄になった共産党はその輝きを失い、社会主義の現実がわかると人々は常識に戻ってゆく。それは戦前に治安維持法で転向した人々と同じだ、と清水は主張する。

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