世界的には保守とリベラルの争点は「大きな政府か小さな政府」かという対立軸だが、この基準でみると日本に保守政党はない。安倍政権は世界的にみるとアメリカ民主党よりリベラルで、野党は極左である。

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この図は内閣府の調査した国民負担率の国際比較(クリックで拡大)だが、日本は極端に大きいわけではない。その特徴は租税負担率の低さである。日本よりはるかに国民負担率の低いアメリカでも24.2%なのに、日本の租税負担率はそれとほとんど変わらない。この最大の原因は財政赤字が大きいことだが、もう一つは社会保険料が高いことだ。

日本の社会保険料は、大きな政府の代表だと思われているスウェーデンの3倍だ。選挙のたびに消費税が争点になって先送りされ、社会保険料が引き上げられてきたため「痛税感」は小さいが、負担の実態はヨーロッパ並みに大きい。

つまり「大きな政府か小さな政府か」というのはもはや問題ではなく、日本は財政赤字や社会保険料で国民負担を偽装した小さく見えて大きな政府なのだ。デモクラシーの基準が「納税者が自分の負担を決める」ことだとすると、日本は税デモクラシーが最低の国である。

北欧モデルはまねられるか

ただ何を税と定義するかは各国で違うので、一概にはいえない。アメリカで税負担率が高いのは、健康保険料と雇用保険料を「給与税」として強制的に徴収しているからだ。スウェーデンで社会保険料の負担率が低いのは、大部分の社会保障負担を税として強制的に徴収しているからで、年金の規模はもともと大きくない。

「日本は北欧モデルに学ぶべきだ」という話がよくあるが、その実態はきびしい競争社会である。企業の倒産や労働者の解雇を国が救済することはなく、体力の弱い企業は淘汰されるため生産性も高い。スウェーデンの国民負担率は55.7%にのぼるが、重税感は少ない。それはアドホックな補助金が少なく所得再分配が中心なので、負担と給付の関係が透明だからである。

年金は確定拠出型で、所得の高い人は高い給付を受ける。財源は地方政府に委譲され、税率は地方議会で決められるので、高い税率も自分で選んだものだ。最大の違いは、スウェーデンが人口900万人あまりの小国だということだ。日本でいえば大阪府や神奈川県ぐらいだから、強力な指導者が出てくれば思い切った政策も実行できる。

そして組織率80%近い産業別労組が労働者をサポートしているので、失業を恐れる必要がない。90年代の金融危機で失業率が10%を超えたときも、自殺率は下がった。労使交渉で同一労働・同一賃金が決まるので、効率の悪い企業は賃金を払えなくて淘汰されることが競争的な圧力になっている。

日本がこういう北欧モデルをまねることはむずかしい。労組の組織率が17%という状態では、労組をベースにした社会保障は不公平を拡大するだけだが、「企業を守るのではなく個人を守る」という考え方は参考になる。ヨーロッパのように社会保障の基本は消費税(付加価値税)で行うことが合理的だし、遅かれ早かれそうなるだろう。