アゴラこども版で書いたように、社会保険料(年金保険料・健康保険料)の負担は今や消費税の3倍以上だ。今回の消費税の「使途変更」は実質的には増税を2兆円先送りするのと同じだが、先送りしても負担の総額は減らない。見える税である消費税が、見えない税である国債と社会保険料に置き換わるだけだ。

次の図は宮島洋氏の資料から借りたものだが、税負担は1990年から下がり続けている。消費税の増税より、所得税の減収のほうが大きいからだ。社会支出(OECD基準の社会保障支出)は高齢化で増え続けているが、社会保障負担はそれほど増えないので、支出と負担の差である国債の発行が激増した。

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こういう構造は世界各国に大なり小なりあるが、日本は支出と負担の差が極端に大きい。政治家が痛税感の大きい消費税を引き上げると選挙に負けることを恐れるからだ。これは公明党の発明した言葉だが、彼らの集票基盤である創価学会婦人部の感覚をうまく表現している。日本の政府債務が大きくなった原因は、こういう専業主婦のバイアスのために消費税を上げられなかったことにある。
日本の政府債務が大きくなった原因は、こういうバイアスのために消費税を上げられなかったことにある。これはよくあることで、アメリカにはいまだに連邦レベルの消費税がない。共和党の税制改革は、それを法人税の減税とワンセットでやろうというものだったが、10年以上前から民主党に阻まれ、今度のトランプの案は法人税減税だけを「食い逃げ」した。

もう一つの見えなくなる要因は、源泉徴収である。これを初めてやったのはヒトラーだといわれるが、アメリカも戦時経済のとき導入した。そのアドバイザーだったフリードマンは「私の提案した改革の中で最悪だった」と後悔した。

それでもアメリカでは、健康保険料と雇用保険料はpayroll taxとして源泉徴収されるので、社会保険料に負担感があるが、日本では厚労省がその権限を譲らない。少なくとも健康保険と雇用保険料は、税務署で一括徴収すべきだが、政治家も税は見えないほうがいいので、改革のインセンティブが(財務省以外には)ない。

逆にマイナンバーを使って電子納税で全部やれという話があるが、そうなると痛税感はまったくなくなる。電子化するのはいいが、いくら払ったのかを強制的に告知するなどの工夫が必要だろう。