在日米軍 変貌する日米安保体制 (岩波新書)
日米同盟は、正確には「日米軍事同盟」である。これはそう古い言葉ではなく、1981年の日米共同声明で初めて使われた。このとき国会で、社会党の土井たか子の質問に鈴木善幸首相が「軍事的意味合いは持っていない」と答えたのに対して、伊東正義外相が「軍事的な同盟」だと答弁したため、閣内不一致を追及されて外相が辞任した。

本書もいうように安保条約と地位協定は、アメリカが在日米軍基地を自由に使うための条約である。米軍基地が世界でもっとも多いのはドイツ、日本、韓国、イタリアである。「なぜ日独伊なのか」と問えば、答は明らかだろう。米軍基地は、旧枢軸国に駐留して監視するために設置されたのだ。

その後も米軍は既得権を離さず、日本政府は平和憲法に呪縛されて、数々の「密約」が結ばれた。本書はそういう資料をコンパクトにまとめていて便利だ。Nスペの「スクープ」と称する核兵器の事故(broken arrow accidents)も既知の事実で、1981年までに(沖縄も含めて)全世界で32件の事故が記録され、文書で公開されている。

もちろん岩波新書なので、著者は「米軍基地はないほうがいい」というのだが、北朝鮮の脅威が現実になったことも認めるので「現実的な選択肢」がうまく示せない。いろいろ苦闘したあげく、最後に出てくる唯一の具体例は、なんと「モンゴル国の国際的安全保障と非核地位」と題する1988年の国連総会決議である。日本もモンゴルを見習って「非核化」しろというわけだ。

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