所有権が法的に確立したのは近代ヨーロッパだが、既得権を守るしくみは昔からあった。それを身体の自由と結びつけて「自己労働の所有」として正当化したのはジョン・ロックだが、彼の論理は破綻している。特に、明らかに労働の成果ではない土地の所有権をどう正当化するのかが不明だ。

それがサンクコストから生まれた、というのがボウルズなどの説である。これは進化ゲーム理論の応用で、次のようなおなじみの「チキンゲーム」を考える。相手がタカだったら自分はハトになり、相手がハトだったらタカになる複数均衡が存在し、ある土地で複数の個体群が争うとき、タカになったほうが支配し、ハトはそれに従うので、土地の支配権をめぐって戦いが起こる(ペイオフは対称)。

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このとき自分が最初にいたらタカになり、あとから行ったらハトになる戦略(所有権)を加えると、図のようにこれが進化的に安定する。今まで巣をつくったり子供を育てたりしたサンクコストを守ることが(個体群としては)合理的なのだ。こういう例は動物でもたくさん見つかっており、サンクコストを守る人間の心理(賦存効果)の一部は、遺伝的なものとも考えられる。

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