日本 権力構造の謎〈上〉
本書が出たのは1989年。「日本はなぜこんなに強力なのか」という謎を解き明かす「日本特殊論」(revisionism)の代表として世界的ベストセラーになり、翌年に日本語訳も出た。著者は日本に住むオランダ人で、当時は日本のマスコミにもよく出ていた。今はすっかり忘れ去られたが、本書はいま読んでも荒唐無稽な感じはない。

最近の加計学園や防衛省の騒ぎをみても、日本を動かしているのは国会や内閣ではなく、顔のない<システム>だという本書の指摘は今も当てはまる。その中身は東大法学部を頂点とする学歴エリートだという話は陳腐だが、残念ながら変わらない。

おもしろいのは、かつて「日本の奇蹟」を説明した本が、そのまま日本の失敗を説明するのに使えることだ。<システム>には中心がないが、かつてのように「成長という合意」があったときは官民協調で環境の変化に柔軟に対応できた。それは著者も指摘するように江戸時代から続く「抱き込みの包囲網」だが、そこには致命的な盲点があった。

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