現代語訳 武士道 (ちくま新書)
『武士道』ほど誤解されてきた本も少ない。それはアメリカ人に「日本の道徳体系」を説明するために英文で書かれたので、日本人が読むと首をかしげる話が多い。武士道という言葉の出典をきかれて、新渡戸稲造は「わからない。私の造語かもしれない」と答えたという。

彼の執筆動機は「日本人は宗教なしで、どうやって道徳を教えるのか?」というアメリカ人の質問だったが、彼は『甲陽軍鑑』も『葉隠』も読んでいなかった。出典は歌舞伎や浄瑠璃などのフィクションなので、武士道が存在した証拠にはならないが、明治期の日本人の主観的な日本文化論としてはおもしろい。

新渡戸の美化したサムライの価値基準は「お家」だった。それは日本独特の宗教といってもいいが、儒教や仏教のような普遍性はなく、あるのは義理と人情と人間関係だけだ。武士が命より大事にしたのは「体面を守る」とか「恥をそそぐ」という美意識だったが、人はそんなことで切腹できるものだろうか。

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