河野洋平氏が、講演で「憲法は現実に合わせて変えていくのではなく、現実を憲法に合わせる努力をまずしてみることが先ではないか」と、安倍首相の憲法改正案に反対したという。ここまでひどい平和ボケは珍しいが、戦後の日本が憲法9条のおかげで「軽武装」で成長したという高坂正堯のような歴史観は、自民党の中にも多い。

1951年にアメリカの再軍備要求を拒否して、在日米軍基地に「ただ乗り」した吉田茂の選択は、そのときは正しかったともいえるが、その後は憲法改正のチャンスを逃してしまった。軽武装が高度成長をもたらしたという根拠もない。その最大の原因は、若年労働者が倍増した「人口ボーナス」であり、軍事予算が2倍になっても成長率はそれほど変わらなかっただろう(航空機産業は発展したかも知れない)。

他方、ただ乗りのコストは大きい。世界最強の米軍を駐留させることで日本は70年以上も戦争をまぬがれたが、防衛は米軍なしでは不可能になってしまった。アメリカの核の傘があるうちは河野氏のような平和ボケでもいいが、米軍が撤退したら、その空白を埋めることはむずかしい。核武装は、いまだに最大のタブーだからである。

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