クジャクの羽は美しいが、何かの役に立つのだろうか。生物学のハンディキャップ理論によれば、羽は目立つので敵に襲われやすく、長い尾は逃げるときじゃまになるが、それゆえに意味がある。それを維持するにはコストがかかるので、派手な羽や長い尾をもつオスは、自分の生殖能力を羽でシグナルしているのだ。

学歴も、クジャクの羽のようなものだ。それ自体は無駄だが、みんなが派手な羽をもつと、もたないオスは生存競争に敗れる。昔は大学に行くことが知識人のシグナルだったが、今はアメリカではMBAでないと一流企業に入れない。それが「大学バブル」だということに誰もが気づいているが、自分だけ降りることができない。
225px-Springbok_pronkこの理論を提唱したAmotz Zahaviがあげた例は、ガゼルがチータなどの捕食者に追いかけられたとき、跳びはね行動(ストッティング)である。ガゼルは最初にゆっくり走り、この写真のように高く跳び上がる。

これは目立つので捕食されるリスクが高まるはずだが、観察データでは、ストッティングする個体の捕食率は低いという。この相関の説明は2種類ある:

 1.ストッティングする個体は体力があるので逃げやすい。
 2.ストッティングを見て捕食者があきらめる。

1が常識的な説明だが、これではなぜわざわざ捕食されやすいストッティングをするのかが説明できない。2がハンディキャップ理論だが、捕食者がそんな理論を知っているはずがない。したがってストッティングする個体を追いかける捕食者の遺伝子が進化の中で生き残ったと考えるしかないが、これはかなり無理のある説明だ。

しかし人間では十分ありうる。学歴そのものには意味がないが、そのために受験勉強して4年間もつまらない授業を聞いて卒業するのは、頭の悪い個体には負担が重すぎる。大学を卒業するのは、それなりの頭の持ち主である確率が高い。大学の価値はこのシグナリング装置としての意味がほとんどだから、そう割り切ればもっと効率的な制度がありうる。